五月原清隆のブログハラスメント

これからは、セクハラでもない。パワハラでもない。ブロハラです。

LOUNGE NOIRの閉鎖に見るSTAR LINKの失敗

 これは、池青鯉さんのブログで初めて知りました。

○最高のホスピタリティとは、自らの拠点空港のシンボルを閉鎖しても語る資格があるのか - 言いたい放題 許してね(スターフライヤー) - Yahoo!ジオシティーズ

http://geocities.yahoo.co.jp/gl/taka741113/view/20070727/1185462848

 まさかと思い、北九州空港のホームページを確認してみたところ、本当にLOUNGE NOIRが閉鎖されるようで、その跡地にカード会社ラウンジ「ひまわり」がセキュリティ外からそっくりそのまま移転してくるという事です。

○8月3日(金)『ラウンジひまわり』の移転についてのご案内

http://www.kitakyu-air.jp/news/news_48.html

 言うまでもなく、航空会社ラウンジは多頻度顧客に対するサービスの一つであり、多頻度顧客にとっては航空会社を選択する基準にもなります。特に、航空会社の拠点空港におけるラウンジは「航空会社の顔」と言ってもよく、各社とも重点的に整備する所です。最近では、7月19日にJALが成田空港のラウンジを大々的にリニューアルオープンしたのが、記憶に新しい所です。
 逆に言えば、拠点空港のラウンジが閉鎖に追い込まれるというのは、航空会社にとって非常に危機的な状態だという事です。多頻度顧客が自社便を優先的に選択してくれる利益を考えれば、拠点空港におけるラウンジの維持費など実に安いものです。その維持費さえ賄えないような航空会社は、見る見る内に多頻度顧客から見捨てられ、経営破綻への道を歩む事になります。つまり、搭乗率の改善とは裏腹に、スターフライヤーの財務状況は既に破綻へのカウントダウンを始めているという事なのです。



 では、何故スターフライヤーの顧客戦略、特に多頻度顧客に向けた戦略は失敗しているのかというと、これは実に簡単な話で、1路線しか運航していない新規航空会社が大手航空会社よりも高い上級会員資格のハードルを設けているからです。現在、スターフライヤーFFPであるSTAR LINKにおいて、上級会員資格であるSTAR LINK VEGAを取得する為には、暦年で60回以上の搭乗実績が必要になります。これは、JALANAの上級会員資格を取得する目安となる暦年50回*1よりも厳しいものであり、東京=北九州というニッチ路線だけでこの基準をクリアする旅客は極めて稀です。また、実際に東京=北九州だけで年間30往復以上もするような顧客であれば、既にJALマイレージバンクANAマイレージクラブで相応の上級会員資格を取得しているのが普通であり、獲得マイル利用の汎用性が極めて低いSTAR LINKに乗り換える必要性も必然性もありません。
 逆に言えば、ANAスターフライヤーとのコードシェアに踏み切った理由は正にここであり、STAR LINK VEGAを取得するような多頻度顧客を根刮ぎANAマイレージクラブに誘導する事こそがANAの目論見なのです。STAR28やSTAR LIMITEDのような低イールド運賃を除けば、ANA便名での運賃はSFJ便名での運賃と極めて近似していて、ビジネス客が利用するような運賃であれば、スターフライヤーには殆ど優位性がないのが実情です。こうなれば、多頻度顧客がスターフライヤーANAとのどちらを選択するかは明白であり、STAR LINK VEGAが企画倒れになるのは当然の帰結なのです。
 しかし、ANA便名での利用者にとっても、決してスターフライヤー北九州便は使い易いものではありません。羽田空港のターミナル分断により、Skipサービスなどの各種サービスが使えないのは勿論、優先チェックインカウンターやSignetなどの上級会員向けサービスも使えません。同様の事象は北九州空港においても発生していて、従来のANA利用者にとっては、スターフライヤー便はあくまでもANA便としてマイルが貯められるスターフライヤー便」でしかありません。北九州空港の場合は、ANAグループ運航便自体が存在していない為、「ANA便としての不便さ」が一層際立ってしまうのです。A320の座席がB777-281B777-381よりも快適な事が唯一の救いで、これがなければ、従来羽田=福岡線を利用していたようなDIA*2PLT*3はとっくに福岡空港へ回帰していた事でしょう。
 結局、スターフライヤーは「一味違うホスピタリティ」を標榜しておきながら、FFPについてはJALANA劣化コピーしか創り上げられなかったのです。それにより、低中頻度の顧客にそっぽを向かせ、多頻度顧客の誘導を自ら放棄したのです。そして、決して便利とは言えない新北九州空港スターフライヤーに付き合ってくれるような真に顧客忠誠心の高い旅客は、コードシェアによって丸ごとANAに取り込まれてしまったのです。北九州空港LOUNGE NOIRが閉鎖に追い込まれたのは、STAR LINK無為無策を象徴する出来事であり、同時に多頻度顧客争奪戦におけるスターフライヤーの敗北宣言でもあるのです。そして、その跡地にJALANAの利用者も入室可能なクレジットカード会社ラウンジが移転してくるというのですから、皮肉という他ありません。

 もし、今からでもスターフライヤーが多頻度顧客争奪戦に復帰しようというのであれば、取り敢えず羽田空港LOUNGE NOIRを復活させる事から始めるべきです。羽田=関空線の開設により、少なくとも今後スターフライヤー拠点空港北九州空港ではなく羽田空港になるのですから、STAR LINK VEGA会員向けのラウンジは羽田空港にこそ必要になります。また、今後羽田=関空線のウェイトが上がっていくのであれば、関西国際空港にもLOUNGE NOIRを開設する事を真剣に検討すべきです。これは特にJALグローバルクラブ会員において顕著なのですが、航空会社の上級会員には、空港ラウンジでタダ酒を呷る事を生き甲斐にしているようなアル中が少なからず存在します。東京=大阪のように新幹線が圧倒的に強い路線で航空機を選択するような旅客であれば、なおさらです。昨年9月30日に中止へと追い込まれた缶ビールの無料配布を通じて、スターフライヤー自身もタダ酒の魔力を知っているはずです。私自身は、深部静脈血栓症や飲酒運転を予防する為にもラウンジや機内でのアルコール無償提供は全廃すべきだと思っているのですが、東京=大阪において多頻度顧客を取り込む為には、こうしたアル中対策も重要になるという事を意識しておくべきでしょう。
 もう1つ、STAR LINK自体について言うならば、JALマイレージバンクANAマイレージクラブの上級会員に対するステータスマッチを実施すべきです。羽田=関空線をどんな客層が利用するかという事を考えれば、体験搭乗の対象とすべきは小中学生よりもビジネス客である事は言うまでもありません。しかし、大半のビジネス客は体験搭乗の為「だけ」に空港まで出向いてくれるほどお人好しではありませんし、そんな暇も殆どありません。となれば、実際の東阪移動においてスターフライヤーを「体験」してもらう他になく、極端な話羽田空港で無料航空券をバラ撒いてでもスターフライヤーに搭乗してもらうべきです。そして、この時こそ「未来の上級会員」に対する絶好のアピールタイムであり、スターフライヤーへの搭乗のみでなく、STAR LINK VEGAをも体験してもらう必要があるのです。FFPにおけるステータスマッチとは、正にこうした上級会員引き抜きの為に実施されるものであり、日本ではユナイテッド航空ノースウエスト航空のそれがよく知られています。JALANAにおけるステータスマッチは寡聞にして知りませんが、少なくとも後発組のスターフライヤーにステータスマッチが必要である事は言を俟たないでしょう。
 尤も、拠点空港にラウンジを設置し、FFP制度を拡充したところで、肝心の路線網が少なくてはお話になりません。何処へ行く時にも使えるからこそFFPの特典には有難味があるのであって、どんなにマイルを稼いでも羽田=関空・北九州でしか恩恵を受けられないというのでは、そんなFFPに存在価値はありません。要するに、スターフライヤーにはFFPなんて役不足なのであって、顧客忠誠度の向上にはFFPとは全く異なるソリューションが求められるのです。それこそが本当の「一味違うホスピタリティ」になるはずなのですが、企画倒れのSTAR LINKしか生み出せない所がデザイナーズエアラインとしての限界なのでしょうね。

【2007-07-29 追記】
 ibstokyo.comさんが、STAR LINKの失敗について平易に解説しています。

○The Highest Skyway [ほぼ日刊航空批評] : 貧乳グラビアアイドルに学べ[閑話休題

http://ibstokyo.exblog.jp/7136408

 Aカップなんて、貧乳としてはまだまだなんですけどね。世の中には、二十歳を過ぎてもAAカップどころかAAAカップにしか育たなかったなんて女性もいるのですから、鹿谷弥生は寧ろ恵まれているというべきでしょう。まぁ、取り敢えず妊娠・出産しておけば若干はカップも大きくなるみたいですけどね(;´Д`)



【2007-07-29 追記】
 よく考えたら、STAR LINK VEGAの資格判定期間って今年12月までなんですね。

プレミアム会員制度「スターリンク・ベガ」

2007年1月〜12月の年間搭乗回数60回以上で「北九州空港でのラウンジ利用」「空港での空席待ち優先」などのサービスが受けられるプレミアム会員制度をご用意しています。

 つまり、現時点でのSTAR LINK VEGA会員は、2007年1月〜5月の搭乗回数が60回以上だった人のみという事になります。これを年間に均せば144回以上という事であり、DIAやJMLの資格基準を大幅に上回っています。2007年6月に暦年搭乗回数が60回を突破した人にとっては、ラウンジアクセスを取得した途端にLOUNGE NOIRが閉鎖という、実に悲惨な結末だったりします。
 尤も、昨年11月1日〜12月31日にスターフライヤー搭乗回数が20回以上だった人はプレプレミアム会員としてLOUNGE NOIRの入室資格を得ていますから、今年に入ってからSTAR LINK VEGA会員となった人も、既にプレプレミアム会員としてラウンジアクセス自体は可能になっている場合が殆どでしょう。逆に訝れば、プレプレミアム会員サービス提供期間終了と同時にLOUNGE NOIRを閉鎖したとも見て取れます。まぁ、どうせ今後はSTAR LINK VEGA会員よりもAMC PLT会員の方が多くなるんですから、IBEXエアラインズと同様、この際STAR LINKそのものを廃止してANAマイレージクラブに加盟した方がいいとは思いますけどね。

*1:実際には、これに加えて実搭乗マイルに関する基準も設定されていますが、東京=北九州程度の距離を25往復もしていれば、基本的にはクリア可能になるものです。

*2:AMCダイヤモンド会員の略号です。JMBで言うFLY ON DIAMOND(JML)に相当します。

*3:AMCプラチナ会員の略号です。JMBで言うFLY ON SAPPHIRE(JMG)に相当します。